はじめに
ハラの森に1本だけ植わっているキョウチクトウ。現在花が咲いてますのでキョウチクトウについて今回話題としたいと思います。キョウチクトウについては、以前、薪に関しての記事の中で、薪に適していない樹種として取り上げました。その点からも気になっていた樹木でありますので、そこらへんに触れながら述べてみたいと思います。
特徴的なのは細長い葉
下に掲載した写真は、ハラの森にあるキョウチクトウが現在、花を咲かせている様子を撮ったものです。白い花を咲かせるキョウチクトウもあるようですが、ハラの森のは赤い花で八重咲きのタイプです。・・・正直言って、これまで花の美しさで関心を惹かれるほど感動したことはありませんでした。この度観察してみて、蕾の赤色には少しばかり毒々しさを感じますが、花になると赤みが薄まり、ショッキングピンクの薄めの色合いで目に優しい感じの色になります。
キョウチクトウの葉は細長く肉厚で特徴的であるから見分けやすい。キョウチクトウの概要項目を記してみます*1。
- キョウチクトウ [ 夾竹桃 ] ; ( 学名 ) Nerium oleander
- キョウチクトウ科キョウチクトウ属の低木〜小高木ー樹高:3〜5m
- 幹が根元から分かれる
- 分布:インド〜地中海原産
- 利用のされ方の例:公園樹、街路樹、庭木、工場緑化樹
*1林将之著 『葉で見わける樹木』増補改訂版、2010年、小学館
ウィキペディアによれば、キョウチクトウの名称は「夾竹桃」と表記されますが、これは中国名を採り入れていて、細身の葉は竹の葉を、花は桃の花を想起させることが理由となっているそうです。昔の中国人も葉を見てキョウチクトウと判別していたことが垣間見れます。
毒の度合いはどのくらい?
で、毒の程度はどのくらいか? という疑問が浮上してきます*2 。
端的に言ってしまえば、キョウチクトウの全部分が毒性があるといってよさそうです。ウィキペディアによると、花、葉、枝、根、果実に至るまで、加えて周辺の土壌にも毒性があるという・・・ちょっと怖くなります。それでは「植栽されて存在していること自体が問題じゃないか、どういうこと!?」 となりますね。いったいどんな毒性を持つのでしょうか? 摂取した場合どのような中毒症状を惹き起こすのか、事例を挙げてみます。
- ◯中毒症状の例
- 嘔気・嘔吐
- 四肢脱力
- 倦怠感
- 下痢
- 非回転性めまい
- 腹痛
で、毒性の源はオレアンドリン oleandrin という物質ー正にキョウチクトウの学名になっているーで、体内にある量以上に摂取してしまうと致死となるとのこと。その致死してしまう分量というのが青酸カリより少量で可能となってしまうことから恐怖感をいっそう増大させます。
愛でられるキョウチクトウ
恐怖を掻き立てるキョウチクトウですが、実際には園芸品種として栽培方法など紹介されています*3。公園にキョウチクトウを見ることもしばしば。毒があるのになぜだろう? 案外キョウチクトウを摂取することの関連死は概して少ないということであるのですが・・・*4。
ここからはウィキペディアなどの解説などからを契機にした筆者の推論です。
キョウチクトウの原産地は未確定であるとのことだが、おそらく地中海域が原産地ではないかと考えられている。そしてインドに及んで自生していたということとも重ねて考えれば、古代文明の発祥の地に存在したということで、人類にとっては馴染が深い樹木であったはずである。歴史の過程で中毒を経験しつつ、その毒性についての知識を得て蓄積させていった可能性は高そうです。
木材や薪などとしては使えないが、その存在にありがたさを感じていたかもしれない。キョウチクトウの自生地は、谷地形の河床や河辺なのです。日本に見られるような一年中滔々と流れる河川をイメージしてはいけない。雨季には氾濫し、乾季には水がなくなり河床の岩が顕となるような、水無川とかワジと呼ばれる地形が生息域です。日照りが続くような土地柄で極度の乾燥から雨季の洪水状態までに対応できる、それがキョウチクトウです。洪水による氾濫を抑えてくれ、日照りの時には日陰を与えてくれるという存在です。乾燥した土地柄に特徴的であるカーキ色基調の環境の中で、鮮やかな緑のシュッとした葉々やショッキングピンクの花は、地中海沿岸やインド大陸の土地柄には癒しを与えるようなアクセントになっているのでないでしょうか?
現に、ゴッホの作品にも Oleanders 『キョウチクトウ』という作品があります*4。毒性を持つことは知りつつもそれを凌駕してしまうほど、その存在に価値を見出しているように思えてならないのは筆者だけでしょうか?
*3 「みんなの趣味の園芸」、NHK出版
*4 “Nerium”. Wikipedia; cf) ゴッホの作品もこのサイトに掲載されている。
さいごに
今回キョウチクトウを記事にしてみて、筆者にとって益することがあった。キョウチクトウの葉や花にも毒性があることが判ったし、伐採した枝などの処分についても毒抜きのため最低でも1年ぐらいは時間を掛けることが必要であることも知れたのです。また、薪には適さないことの理解を深められたことはよかった。
他方で、毒性があるから即排除の対象とする考えはよろしくないと思った次第です。毒性を持っていることを知りつつも共存する姿勢を持てば “win-win” の境遇を得られるとでも言えましょうか。乾季の日照りに耐性があり、かつ洪水を抑えることもできるキョウチクトウの存在は貴重である。西欧、インドの人たちにはキョウチクトウとの親密性的なことが存在すると推察してしまうのは、筆者の独断的考えであろうか? とにもかくにも、筆者にとっては理解しがたい “ 何か ” を感じさせる樹木であります。
今回はこれぐらいにして、ごきげんよう。
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