はじめに
ハラの森・管理人である筆者は、生ごみのコンポスト化に労力と時間をかけておりますが、やはりこの処理法については触れなくてはなりますまい。そう、多くの自治体で生ごみ処理法として推奨されている「キエーロ」です。今回は、キエーロについて考える機会としたいと思います。
ハラの森で行っているコンポスト(堆肥)化はこんな具合
ハラの森の回転式でつくったコンポストでは、生ごみの形が比較的識別できる。これはオレンジの皮だ、バナナの皮だとか、ハラの森の管理人・筆者は、バナナを日々頻繁に食すので、バナナの皮が生ごみとなり細分してコンポスト化していますが、月1回の排出時には真っ黒にはなっているものの、バナナの皮であったことは解るぐらい程度の分解度です。漬物的な匂いがするので分解が進んでいるということであると思います。以前にも書きましたが、ハラの森のコンポスト方法は、未分解で排出し、その後露天に曝し、時にコンポストの山を切返し、時に土と混ぜ合わせたりもして分解促進を図る、という次第で行っています。
キエーロとは
行政のごみ収集サービスを生ごみについては、利用しない方であれば、一度は「キエーロ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか? また、ネット検索したりして形も見知っている人が多いかもしれません。
端的に言ってしまえば、「キエーロ」とは「消滅型生ごみ処理器」です。容器には黒土あるいは木端、竹の端材が入れます。この黒土や木端などのことを「基材」と呼んだりしますが、生ごみをコンポスト(堆肥)化する世界では、この用語は共通的常識になっているようです。基材には微生物が生息していて、彼らの食材となる生ごみが投入されると、微生物群が生ごみを食べることで、生ごみの形跡が見られない程度にまで至るという分解器です。
キエーロの誕生秘話
キエーロは、神奈川県逗子市の市民の松本氏が1980年頃から考案し制作したのが始まりです*1。当時の逗子では生活排水はほとんど海にたれ流し状態でした。松本氏はそのことに関心をもち続け自宅で様々な生ごみ処理方法を考えていたそうです。
そうした時間を費やす中で、氏がキエーロを発明するに至った大きな契機となったことがありました。庭の一角に落葉を集めて腐葉土を作っていた場所に、何気なく生ごみを落葉の間にはさみ込んだそうです。結果、1週間後にほじくり返してみたところ生ごみの形跡はなかったというのです。そう、これがキエーロによる生ごみ分解の根本です。自然物の腐葉土や黒土、そして木や竹の端材を基材として、これを以て生ごみを分解する方法です。これが1995年のことだそうです。そして10年以上の年月を掛けて、基材と容器、筐体の改良を重ねた成果が、現在日本全国に普及するキエーロとなっているわけです*2。
*1 松本 信夫ーキエーロ葉山代表、平野 理恵ーゴミフェス532(ゴミニティ)運営、黄 穎ー慶應義塾大学先端科学技術研究センター(KLL) 博士研究員、宮本 憲二ー慶應義塾大学理工学部教授、
「消滅型生ごみ処理容器「キエーロ」と微生物叢の網羅的解析」
KEIO SFC JOURNAL Vol.23 No.2 2023
*2 国立市チャンネル、「ミニ・キエーロの使い方」
ハラの森管理人(筆者)がキエーロを評価する点
1)処理法が簡単:
生ごみを基材の中に、移植ゴテあるいはスコップで埋込みます。そして次回の埋込みに関しては、前回の場所を外した箇所に行う。以前の埋込み場所をほじくり返して、新たに埋込み場所とするのは約 1 週間後になるが、分解しにくい物を除けば跡形はないということだ。処理法が簡単であるのがいい。
2)基材の量が変わらない:
数年間使用を続けても基材の量が同じ。生ごみ処理された物が土となって増えるということがない。
キエーロのコメントを見聞きして筆者がもつ感想は上記 2 点ですが、関心が惹かれるのが ( 2 ) についてです。
生ごみ処理をしていて、基材の量が増えてしまうと、家庭菜園をしている方は基材を栽培に利用することができますが、家庭菜園を行っていない、マンション住まいなどでベランダで生ごみ処理を行いたいだけの方にとっては困ってしまいます。ということで、この点がキエーロの最高の利点であると考えます。
ただ疑問が残ります。基材の変化量がないということは、どういうことなのでしょう? 「質量保存の法則」は関連してこないのかしら? 化学的教養が欠如しているため考えが浮上しません。宿題です、これは。
ごみ問題を全般的に考えることが必要だ
焼却処分しているごみの内、約40% は生ごみであり、水分を多く含むことから焼却には多くのエネルギーを必要とするのだそうです。各世帯でコンポスト活動をすれば生ごみの焼却に掛かっている燃料分が減るのですから、その節約できる量たるや、かなりの規模となることは間違いないでしょう。ですが、多数派の市民は生ごみのコンポスト化に着手するかは判りません。
筆者が住まう地域には行政サービスの生ごみ回収があり、それらは焼却場で処分されていますが、これも当然の市民サービスとして享受していますが、こうしたサービスも状況が変化してくることを予想しておいた方がよさそうです。
神奈川県の鎌倉市では今年2024年、市に一つしかない焼却施設を閉鎖して、隣接する逗子市にごみ処理を運搬し、処理を依頼するということです*3。当然、ごみ処理費を逗子市に支払うことになるわけですから、鎌倉市民はその分を負担するということになるのでしょう。
ちなみに、「ごみリサイクル日本一」とされる鹿児島県の大崎町にも焼却場はありません。筆者は、同町のことを映画「大崎から」*4で知りました。
二酸化炭素の排出規制が厳しくなると、「焼却施設の稼働も抑制すべし」という動きも必須という事態は想像できます。コンポスト活動をすることは、そうした事態にも対応しやすいでしょうし、生ごみ以外のごみを減らすアイディアを与えてくれるかもしれません。
ともかく、ごみを減らしてエネルギー消費を少なくなる習慣をつけることが、僅少ではありでしょうが地球の負担を軽減する一歩となるはずです。
*3 鎌倉市ホームページ>くらし・環境>ごみ・リサイクル>「ごみ処理広域化について」
*4 東京ドキュメンタリー映画祭 上映作品 :「大崎から」 監督・撮影・編集ー平田雄己、小池悠補、2023年
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