薪の何が問題なのか?
前回の記事で、薪ストーブの採用を考えさせられる記事に出合い、調べる必要が浮上したことについて述べました。そのきっかけが、Web・The Guardianの記事でした*1。記事の要点を以下にまとめてみます。
1)伐採予定でなかった木まで、薪価格の高騰から薪にされてしまっている
2)薪ストーブの扉を開ける度に、咳込みがひどくなる
3)ストーブを止めると煙突から出る黒煙
*1 My burning shame: I fitted my house with three wood-burning stoves; By George Monbiot,
https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/dec/27/wood-burning-stove-environment-home-toxins
上記の要点は、さらに2つの問題点にまとめられそうです。
- 薪の生産の問題
- 薪ストーブから排出される煙の問題
本稿では、2.の薪ストーブと煙のことを考えてみたいと思います。
薪ストーブから排出される煙とは
薪ストーブから排出される煙について、先述のThe Guardian の記者が、同社の環境問題を専門とするカリントン氏が編集する、薪ストーブから出る煙に関する記事を紹介しております*2。
その記事の冒頭で、家庭にある薪ストーブは、道路交通機関全体よりも家庭にある薪ストーブの方が、たくさんの微粒物質汚染 (particle pollution) を撒き散らしている、と述べています。
*2 Wood burners emit more particle pollution than traffic, UK data shows ;By editor: Damian Carrington,
微粒物質汚染 (particle pollution)とは、何でしょうか?
“particle pollution” とググってみると、米国環境保護庁 (Environmental Protection Agency : EPA) の解説サイトが閲覧できます*3。
*3 What is Particle Pollution, https://www.epa.gov/pmcourse/what-particle-pollution#what
まとめてみますと、微粒物質汚染とは、particulate matter(PM) 粒子状物質として知られていて、大気中に浮遊する固体、液体を引っくるめた総称的な用語ということです。
ついに出てきました、PMという用語。先のThe Guardianのカリントン氏編集の記事で、「…家庭にある薪ストーブの方が、」乗用車、トラックなどから排出される量以上に「たくさんの微粒物質汚染 (particle pollution) を撒き散らしている」、とありました。つまり、薪ストーブは、粒子状物質 (PM) を放出している、このことが問題なのです。
particulate matter(PM) 粒子状物質について
particulate matter(PM) 粒子状物質は、簡単に言ってしまうと、空気中に微細な漂っている粒です。理解の取っ掛かりとして、日本で耳にする表現では、次のような例が挙げれれます。これは、Web版の毎日新聞、2023年4月13日の記事です、タイトル:「黄砂で健康被害の恐れ ぜんそくや脳梗塞…子供・高齢者は注意を」。
この記事の冒頭で、次のように始まります、「大陸から日本列島に飛来する黄砂や微小粒子状物質(PM2・5)。大気汚染の原因となることでも知られるが、私たちの健康にはどのような影響があるのだろうか」*4。
このように、春先、花粉症の方が鼻や目がむず痒い時分に、PMの名称が登場し、大気汚染や健康を損なう危険性の注意喚起を促される、というのが、筆者の認識です。
*4 https://mainichi.jp/articles/20230413/k00/00m/040/140000c
有料記事で読めないかも知れません。その際は悪しからず
ですが、実際、私たちが日常的に生活している周囲の空気中にPMは存在しています。中国大陸からばかり飛来するものでなく、日本にも身近に存在するものであることを改めて認識し直しました。先の、アメリカEPAのサイトを参照しますと、粒 particle にもいろいろありまして、大きいものでは、砂浜の砂粒が90マイクロメーター(μm)、髪の毛の直径が50‐70μmで、このサイズのものは、健康面的に心配する必要は少ないとのことです。10μmより大きいサイズの場合、肺に入れるほどの大きさではないからです。問題となるものを、以下に分類しました。
ちなみに、マイクロメーター (μm) : 1m x 1/1,000,000 ですから、1mの100万分の1、1mmを基準にしたら1mm x 1/1000 という大きさです。
- 粗粒子 coarse particles : PM10〜PM2.5 ; ex) 塵、花粉、カビ、菌
- 微粒子 fine particles : PM2.5 > ; ex) 燃焼粒子、有機粒子、金属
粗粒子、PM10より小さい粒子になると、鼻や喉を通って肺の中に吸入されてしまいます。ということで、10μm、髪の毛の太さの1/5以下の大きさであると、健康上の問題を惹き起こす可能性が出てくるということです。
微粒子、PM2.5よりも小さい粒子です。薪を燃やすことで生成される粒子はここに区分けされます。
どんな健康上の問題があるのか?
筆者が薪ストーブについて考えた際に初めて出合ったThe Guardian の記事で、その記者は薪ストーブを使っていて、薪を焚べるために扉を開けると咳き込む、という現象があったと書いていました。その記者は、喘息持ちであったこともあり、PM2.5 に敏感であったのかもしれません。
PM10よりもPM2.5は微細であり、体の中に取り込まれやすく、血管の中にも入り込めるので血流に運ばれて心臓や脳にまで及び、そこに残留することまでできてしまうのです。
結果、心臓血管系への影響があり、心臓発作、心不全、そして脳卒中になる可能性があるとのことです。またあるいは、呼吸器系への影響も報告されています。子どもの肺の発達障害、咳き込み、そして息切れなどの症状を惹き起します*5。
*5 Particle Pollution Exposure, by United States Environmental Protection Agency (EPA), https://www.epa.gov/pmcourse/particle-pollution-exposure
筆者は、ひどく寒がりなので、薪ストーブのすぐ前に陣取って長時間にわたって座りがちになりそうです。無防備にこれを行えば、まさに病気を誘発しかねません。ましてや、寝室に薪ストーブを弱火にして稼働させておくことは、一晩中、毒ガスを吸い込んでいることになってしまうのでしょうか。……。薪を使う熱源利用の判断は、まだまだ理解を深める必要を感じています。
次回は、薪の生産の問題について考えて見たいと思います。ごきげんよう。
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