日々の生ゴミ処理
ハラの森・管理人はコンポスターを作成し、それを利用して日々の食事の調理するに際に出るゴミを分解させています。生ゴミを分解させるといっても、それは発酵促進剤である粉末を入れて、そこに日々の生ゴミを投入して、コンポスターのハンドルを掴んで10回ぐらい回転させるだけです。そして、容器がいっぱいに近づいてきたら、内容物を敷地の一角に広げるだけです。
廃棄物を再生するという発想
日々の暮らしから出る生ゴミをコンポスト、肥料化するという考えは、日本的であるのかな、と思っていましたが、海外諸国でも行われているようです。以下に掲載したのは、アメリカの都市部で、生ゴミ用収集用のゴミポストが設けられていて、その収集された生ゴミ処理がどのようになされているのか、その実際について、意外な事実と、それについての戸惑いを記者が述べたものです*1。
*1 US cities say they turn food waste into compost. Is it a problem when they don’t?
About this content, by Whitney Bauck Wed 30 Aug 2023 11.00 BST
その事実とは、この記者は、ゴミ埋立地の実情や食品廃棄物に問題意識があり、生ゴミの収集ポストが身近にあって然るべきで、集められた生ゴミは、堆肥場に行き土に戻されるのだと思っていました。ところが、ニュースによると、収集された食品廃棄物は下水処理場に届けられ、汚物と混合され、部分的にがメタンに変換されることを知ります。記者が戸惑いを感じたのは、メタンは地球温暖化を促進させる能力をもつガスであるからです。
この問題は、ハラの森でコンポスターで生ゴミ処理をする際の問題でもあります。コンポスターを回転させる方式の処理を行っていますが、これは以前の記事で述べたように好気性微生物を活用した分解法です。これは、釣り鐘のような大きなバケツ容器を被せて、生ゴミを溜め込んで、最後に土を被せて分解させる方式とは異なります。後者は、嫌気性微生物を利用していてメタンガスが発生します。
嫌気性微生物による分解は、英語で anaerobic digestion と言います。アメリカでは、この方法が多くの州で採用されて、その処理場が稼働し、また建造されてもいます。ヨーロッパでもかなり採用されています。で、この記事の著者は思うのです:堆肥化することと照らして、その嫌気性微生物を良しとしているのは、どのようにして成り立つのか?
記事によれば、堆肥化と嫌気性微生物による食品廃棄物再利用を天秤にかけると、すべての人は、どちらがどちらに優越するということに意見を一致させることはない。アメリカ合衆国環境保護庁 ( The US Environmental Protection Agency : EPA ) は、嫌気性微生物による食品廃棄物再利用を堆肥化よりも上位に位置づけるが、天然資源保護協議会 (the Natural Resources Defense Council : NRDC ) の尺度では、2つを同じ階層に位置づけ、最善の選択は、状況によるとしている、と述べています。
記事は、それぞれに優れた点を紹介します。
嫌気性微生物を基本にした分解は、有機物の固体と液体の残渣そしてメタンとなり、このメタンを再生可能エネルギーであるとし、有機物の残渣については、処理を施すことで堆肥化できるとする、メリーランド大学の環境科学・技術の教授の言説を引用しています。ここでの要点は、食品廃棄物からエネルギー資源としてメタンを生成でき、その過程で出る残渣も堆肥化できる、両得であるということです。
しかし、記事の著者は次のように思います:生成されるメタンは、発電所あるいは汚水処理場そのもので、エネルギーになることができ、そのメタンの一部を燃焼させ大気中に放出している。このメタンを「再生可能エネルギー」と呼ぶのにためらいが生じる。記者は NRDC の見地を援用しつつ述べます。「再生可能エネルギー」とは、エネルギーの原資の補充が容易になされるものであって、安価にエネルギー生成ができることが条件になると思われるからだ。そもそも、私たちはゴミを出すことを全く望まない。であるから、「再生可能エネルギー」と呼ぶべきではない。
またこの記事は述べているのは、アメリカの天然資源保護協議会 NRDC は、嫌気性微生物を利用した食品廃棄物分解に全面的に反対しているわけではなく、「限られた」意味では支持していて、メタンガスを生成したあとの残渣を堆肥化することを推奨もしている。しかし、実際、残渣を堆肥化して土に返すというよりは、ゴミ処理場での埋めるか、焼却されることが多いのが現実であること、また、食品廃棄物を下水の汚物といっしょにしてしまうことで毒物が混入し、日常生活に近い公園の土や庭の土といっしょにするのは不適切になってしまう、ということである。
つまるところ
嫌気性微生物を利用した分解法には負の側面が多すぎるのでは、という感想を抱いてしまうかもしれないが、この記事は嫌気性微生物による分解に対して非を唱えているのではない。好気性微生物の分解では、乳製品、肉や油脂は分解が難しいのである。これらには嫌気性微生物分解法の方が優れている。
つまるところ、一方の分解法に決めてしまうのではなく、分解対象に応じてより得意な方の分解法を選択することが大切であるということ、他方で、日々排出したされるゴミを、行政はどのように処理しているのかを情報を明らかにすること、そのことで市民がゴミの分別を積極的に行うことに繋がる。こうした環境を築いていくことが肝所である、としている。
日本では
ニューヨークの通りにできた、生ゴミ処理ポストを通じて、食品廃棄物を汚水処理場の汚物と混合させることで、メタンガスを生成するというアメリカでの事情でしたが、日本ではこうしたことが行われているのでしょうか?
実際、日本でも行われています。メタンガスを発生させることで、食品廃棄物や家畜の糞尿を利用してメタンガスを生成や堆肥化を行っています*2。
*2 「メタンガス化が何かを知るための情報サイト」、環境省
だから、どうするの?
日本で、メタンガスを生成させていることは、著者は知りませんでした。身近にその施設がないこともあるかもしれません。実際、食品廃棄物や家畜の糞尿などを再利用してメタンガス化する工場施設は日本全国的に存在するわけではありません*3。
*3 「メタンガス化が何かを知るための情報サイト」> 「どれだけ施設があるの?」、環境省、前掲ページ
今回紹介した記事の中で、述べられていたことに、行政がどのように収集したゴミを処理しているのかを明らかにする必要について言及していました。市民がそれによってゴミ分別に意識的になったり、身近の公園にコンポストとなった土が加わっていくことで、環境問題への参加意識の契機にもなるというのです。
現在、日本ではメタンガス化する方法が採られている方法は評価すべきとは思いますが、これが絶対的な正解とは言えないでしょう。廃棄物が資源化されるからといって、資源の無駄遣いをするというのは筋違いです。環境に負荷が低く、かつ温暖化ガスを排出しない方策を目指して模索していくことが姿勢が必要であるということですね。そのためには、行政に丸投げということではなく、市民が政府に情報を開示を求め、考え行動してくことが必要である、ということです。机上論と言われてしまうかもしれませんが、環境問題に取り組んでいくことは、よりよい民主主義社会をつくっていくことであることでもあることに気がつきます。
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